2.活動内容

(2)活動内容

E文化財としての所見(監修)

 県内には現存する明治期の警察署庁舎は、旧松井田警察署とこの旧沼田警察署分署だけであり、当該建築物は旧松井田警察署(※1)についで古く、また、現存する役場庁舎としては県内最古である。また、全国的に見ても、文化財建築物として指定または登録されている警察署庁舎の中では、建造時期の古さから、5,6番目(※2)に入る貴重な建物である。当時の役場、警察署等の庁舎は、地域や地区の顕官等が威信をかけて建造している、擬洋風と言われる当時の知識と大工技術を駆使した建築物である。一方で、小学校などの例はあるが、当該建物のように、地域の治安を守るために、簡素ではあるが、地域住民が力を合わせ造り上げた歴史を物語る建築物があり、全国的に見て数少ない貴重な例である。

 建物の特徴は、北面した玄関部分を伝統的な社寺建築の技法を用い、全体的に簡素である。積極的に和洋折衷建物という範疇にあるとは言いがたいが、印象としては洋風建築の雰囲気を備えている。

 当該建築物は、昭和村だけで無く広く日本の歴史を物語る貴重な建築物であり、当初建築物の十分な骨格が残っていることから、復原整備を行い、地域文化財として活用し、後世に長く伝え守られるべき建築物であると考えている。

宮澤智士先生(長岡造形大学名誉教授・元文化庁文化財部建造物課々長)の監修

調査結果及び図面を見て頂き、現地に出向いて監修意見を頂いた。

  1. 残存状態をみても、地域の文化財として貴重な建造物である。
  2. 村指定文化財にして、保存・復原修理を行い、住民の活用施設とすること。
  3. 復原修理に当たっては、解体調査を行い、当初復原考察を十分に行うこと。
  4. 活用に機能する便益設備を設ける。また、断熱も十分に考慮すべきではないか。

 私たちは、以上のご意見を基に、すでに、住民意見を入れて、昭和村に対し、当該建物の文化財指定を働き掛けている。

図−15 平成23年11月28日 宮澤先生の現地視察
図−15 平成23年11月28日 宮澤先生の現地視察 図−15 平成23年11月28日 宮澤先生の現地視察

※1  旧松井田警察署:明治9年に松井田宿旧金井本陣金井菊太郎宅に巡査屯所が置かれ、翌10年に購入、留置場などが設置され、警察署として昭和14年まで使用された。その後、仲町公会堂となり現在に至っている。

※2  旧鶴岡警察署(明治14年(1884))、旧本庄警察署(明治16年)、旧宇和島警察署 (明治17年)、旧生野警察署(明治19年)、旧檜山爾志郡役所・警察署(明治20年)、旧登米警察署(明治21年)