当初の計画では、当該建物を住民の手で部分的に再生し実験活用までが目標であった。今回の事業では、掃除、片づけ、建物調査及び活用提案までしか行えなかった。しかし、この事業の成果としては、地域の厄介者から、所有者が村となり、住民・議員・村が真剣に、保存・活用に向けて動き出し、村指定文化財へ向けて一歩踏み出すことが出来たことにある。
事業期間中のワークショップ(研修会)は、先進地視察、商工会主催「農商工連携人材育成研修会」を含め10回行った。私たちは、昭和村の地域づくりを伝統的建築物や養蚕集落景観等の歴史資産とそれらを支え活性化するためには、地域産業である現代農業を結びつけ、新たな地域ブランドを造り上げることが必要と考えた。その中で、旧沼田警察署分署を地域のコミュニティの核として活用すると共に、昭和ブランドの発信基地として再生することを提案したいと考えた。そこで、研修会の講師として、福井隆先生と真島俊一先生をお招きし、住民の方々と昭和村の地域づくりを考えることとした。
図−7 研修会チラシ | |
福井先生は、東京農工大学大学院客員教授、地域生存支援LLP代表、NPO法人日本エコツーリズムセンター理事を務められている。全国で農山村の地域振興・まちづくり等に幅広く活動され、とくに、農業を始めとした、様々な地域資源の掘り起こしや、それらのブランド化をとおして次世代に通じるまちづくりの提言をされている。
真島先生は、(株)TEM研究所代表、日本生活学会前副会長、道具学会理事、トヨタ財団研究助成団体審査委員を務められている。全国各地の生活文化を中心とした調査・研究活動を行っており、地域固有の伝統文化を活かしたまちづくりの提言や整備事業に携わる幅広い見識をおもちで、生活文化を研究されている立場から、一方の地域資源である集落景観と民家から考えるこれからの生活像について、お話しいただくこととした。
福井先生は、現代農業を中心に昭和村の諸特徴を整理するとともに、「地域づくり」「ブランドづくり」の問題点抽出から成功へといたった全国のまちづくり事例を紹介し、明晰な分析を示された。全国に誇れる「営みの風景がひろがる村」として昭和村を捉え、その要因を住民、自然環境、風土、そして農業生産から分析することをとおして、地域ブランドの重要性と必要性を指摘した。ブランド化はトレンドの影響を受けにくく、村の個性を発信しうるものなのである。農業を取り巻く状況は厳しさを増している。昭和村ではその危機への意識が弱い点が指摘された。昭和村の農業は豊かではあるが、それを持続させることを考えていかなくはならない。このような公益的な事業は担い手が住民であり、その視点から自らの足元を見直すことが必要となっている。そうしてみいだされる個性を活かすことが将来への希望を創りだすのである。均衡ある発展が、地域が個性を喪失している現在、地域再生の鍵となる。地域資源(昭和村の場合は、農業だけで無く歴史的景観や生活文化そのものが地域の魅力としての地域資源である)をまちづくりに結びつけた事例から理解されるのは、「人を呼ぶ」のではなく「人がくる」ようにその資源を活かす仕組みを造ることといえる。「地域の個性を生かすと、農産物の価値が上がる。」本質を読み取り個性を生かすことが価値を高めると説いた。
真島先生は、自然、地形、歴史、農業から昭和村を捉え直し、今後への方向性を語られた。一年をとおして、何らかの作物が生産されている状況から、まず農作業の忙しさを昭和村の特色とされた。河岸段丘上部の宏大な風景は北海道を想わせるものがある。その風景のなかに建物が残っているが、必ずしも生活とは合わなくなっている現実もある。こうした景観と生活を、快適に楽しくかつ安心に暮らせるものとしていかなくてはならない。しかし、これからこうしたいという生活の要求の責任は住み手にあると指摘された。こうした点に関連し、生産の方式にも昭和村の方式があるとされる。そして新しい風景を生みだす時代へ向かうとき、歴史が提示した形をみいだしていくことが大切である。「過去を握りつぶしたところは、個性も育たない」と述べられ、そして、住民が誇れる昭和村の特性を認識するために、住人自身の手でジオラマ(1/2500程度の地形図)作りを行うことを提唱された。また、昭和村の養蚕民家がかたちづくる歴史景観を次世代に継承するためには、生活文化を見直し、現代生活に合った古民家を創作していかなければならないし、8段とも言われている河岸台地のそれぞれの条件に合った生活の仕方を見つめ直すことが、重要であると言われた
図−8 |
図−9 研修会コンセプトマップ−1※図をクリックで拡大 |
図−10 研修会コンセプトマップ−2※図をクリックで拡大 |
図−11 研修会コンセプトマップ−3※図をクリックで拡大 |
地域を「学び、活かす」=地元学 ➪学ぶ対象
➪新しいものは「あるものとあるもの」の組み合わせから生まれる
↓
継続的に自分たちで学び、地域を知る➪地元学のルーティン化
↓
組み合わせ事業化する(産物等産業化、交流メニュー化、教育プログラム化、高齢者福祉メニュー化、修景など)に利用する
□地域における地域資源の生かし方(考え方)
■ 大きな変化の時代においては、従来からの枠組みの考え方で解決策を考えても、解決を図ることはできない。
(アインシュタインの言葉)
背景:財政破たん懸念、人口数縮小、環境共存、グローバル化
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香川県は、なんと「うどん県」で観光ポスターを作った!
秋田県は、「秋田美人」をもじって「あきたびじょん」で打ち出すことになった。
昭和村は・・・「野菜王国」? 地域外の人がこの言葉で昭和村をイメージ出来るでしょうか
昭和村は、樫の実の文化がある。食べる事のできる防風林(樫(かし)垣(ぐね))
それは、粉を食べる文化 「粉食」文化➪ うどんにつながる?
植物を上手に使う文化が形成された。
昭和村は、常に時代の先端を切り開く文化もある。
➪ 山は牧場から農地へ 養蚕から蒟蒻に移り、朝どり野菜に、そして季節をまたいで大規模「出づくり農業」
・もう一度 足下を見直して、昭和村を何で打ち出していくかを良く考えよう
➪ そのために、地形模型をつくることから始める
➪ 地形模型は、2500分の1を住民の手でつくる
➪ みんなでつくる中で、あらためて昭和村を知ることから始める
・例えば、犬をどの家も飼っている(生越には犬が多い)!
「ワンだ〜らんど昭和村」も一つの文化!
・古民家は寒い、不便から、最先端の快適な暮らしの場に➪新民家PROJECT
・「お井戸 ものがたり」
➪上手く行っている事例について、誰のどんな動機から始まっているかを注視
➪自分の思い×地域が求めていること×地域の資源
図−12 地域における地域資源の生かし方(考え方)
@地域を知る(常に現場を知る)
Aまちを元気にする仕組み(プラットフォームづくり)
B常に事業化を考える