2.活動内容

(2)活動内容

A旧北勢多郡役所(旧沼田警察署分署)に関する資料調査等

平成4年度に群馬県から上梓された「群馬県近代化遺産総合調査報告書」には、当該建物について、「糸之瀬役場(旧北勢多郡役所?)」明治23年建造との記載があるが、前記の資料から、関連する郡役所・警察署関係の記事を年順に並べると以下になる。

・明治 7年 沼田町警視方出張所設置(どこなのかは不明)
長者久保村が糸井村に合併
・明治11年7月22日 太政官布告第17号 郡区町村編制法
北勢多郡役所(旧十八大区一円)は沼田町に設置(糸井村に設置という記述も多い)、利根兼北勢多郡長松本真三任命
・明治11年12月17日 利根郡役所開業式、利根郡及び北勢多郡を併せて管掌、糸井村に北勢多郡役所を置く(設置場所の記述は見あたらない)。
・明治13年 北勢多郡役所は沼田町に移り、北勢多・利根郡役所と改称する
・明治18年 糸井村に巡査駐在所ができる
・明治19年 糸井村に沼田警察分署ができる
・明治20年11月 糸井村が庁舎を字中宿に新築し、警察分署として寄付(昭和33年時点では郵便局になっている)
・明治22年 警察分署廃止 巡査駐在所となる。
4月 糸之瀬村誕生(糸井、貝野瀬合併)、役場は加藤鉄次郎の持家を臨時に使用する。
久呂保村(森下・川額・橡久保)、赤城根村(日影南郷・青木・砂川・輪組・生越など)誕生。
・明治23年 糸井地区が費用を負担し、字中内に糸之瀬村役場を新築する。
・明治29年 4月 北勢多郡を廃止して利根郡に。郡役所名も利根郡役所と改称
中宿の巡査駐在所の建物(糸井所有)を糸之瀬村役場とし、中内の村役場は巡査駐在所となる。(昭和33年時点の)現在位置になる。
・昭和20年10月 糸之瀬役場は、中宿から上内出の元陸軍気象部建物に移転する。
・昭和24年 中宿の旧役場跡の建物で糸井郵便局開局する。
・昭和48年 糸井郵便局は移転し、その後、貸家として近年まで使用される。
・平成23年 4月 空き家となり糸井財産区で管理されていた建物は、所有権を昭和村に移管する。

これらの文献資料から、当該建物は、明治20年建造の旧沼田警察署分署であると判断した。文献からは、当初糸之瀬役場と共に、糸井地区が建設し寄付をしたことが判る。糸井は、現在も大規模養蚕民家が数多く残っていることから、当時はかなり裕福であったことが想像される。

 今年度も計画では、歴史的建築物を調査選定して再生提案と実験活用を行う予定であったが、行えなかった。但し、研修会の会場として、糸井の高橋家(糸屋)ご好意でお借りして開催することが出来た。参加者の方々には、古民家での集まりは好評であった。古民家を活用して、農産物の販売や食事の提供を検討したいという住民も出てきた。研修会では、昭和村ブランド創りの一環として議論してきた。

 今に伝えられる俚諺に「糸井、貝野瀬家づくりゃ良いが、釜の蓋とりゃ鬼が出る」と言うのがある。鬼は麦飯のことと言われているが、この辺では元々米はとれない。同じ俚諺が伊勢崎市島村でもあるそうである。共に養蚕で栄えた村である。豊かさに対するやっかみと卑下が交差しているように思える。