3.事後評価

3-1 事業の効果

 今年度の事業で、これからの農業と農業以外の伝統や生活文化という地域資源(地元学を学んで気付く足下にある宝)が一体となって組み立てられた「昭和村ブランド」が、活き活きとした昭和村を築く唯一の方法であることを認識した。この「昭和村ブランド」こそが美しい風景、集落景観を守る唯一の手段であると信じている。

 また、旧沼田警察署分署(旧糸之瀬役場庁舎)の建物は、今回のプロジェクトの提案で、村指定文化財へ向けて一歩踏み出した。

 生越地区の建築物詳細調査については、今後の課題となるが、景観資源調査が行えたことがこれからの活動の大きな支えとなるであろう。昨年度から登録文化財が視野に入っているお宅も数軒あるが、まだ承諾は得られてはいない。また、スケッチ画や写真パネルは村や商工会に提供して活用したい。昨年画いたスケッチの一部は、国際交流のお土産になっている。

 無料住宅相談は、昨年同様、残念ながら具体的な再生事例等の成果はなかったが、プロジェクトの姿勢として住民の理解が得られたものと考えている。

 今回のプロジェクトの効果を纏めると

  • 養蚕民家や集落景観が、地域資源として「昭和村ブランド」の重要な要素であることを気付き始めたこと
  • 具体的な再生・活用はこれからとしても、養蚕民家や集落景観が、地域資源として重要であることを認識できたこと
  • 旧沼田警察署分署(旧糸之瀬役場庁舎)の建物をコミュニティで保全に動き出したこと。
  • 村の担い手として活動する人達が昨年より明らかな形で生まれてきた。地域住民が地域の景観や伝えられてきた生活文化をまもるために動き出したことが、最大の効果である。

昨年度も述べたことであるが、農業と歴史的景観保全が積極的にコラボレートして新しい農業が生まれ、単に古民家で農業体験をさせるだけでないものを企画する可能性を考え、一方で農業が、古民家の再生に力を発揮するとしたら、環境共生建築・長期優良住宅を農作物が側方支援をすることになる。講師の方々には、私たちを含め様々な人たちに新しい視野を与えて頂だき、感謝している。

3-2 目的の達成状況

 目的の達成状況は、必ずしも満足できるものではない。景観保全といっても、旧沼田警察署分署以外は、具体的で目に見える成果は上がっていない。活動の最中でも、私たちと考え方の違う長期優良住宅が、100年以上長期優良住宅として建ってきた建物を壊して建てられていく。もう考えているだけの時間は無い。住民が当事者として一歩踏み出すだけであり、私たちは、後押しをするための準備をしている。内外共に、今回の事業でさらに仲間が増えた。そして、RACの活動である養蚕文化ネットワークも拡がってきた。目的の達成には遙か及ばないが、足を止めること無く、少しでも前に進もうと考えている。