2.活動内容

2-2 活動内容

2-2-1 地域の歴史的建築物・景観資源調査:(@生越地区の景観資源調査)

 事業受託後、最初に生越の景観資源調査に取りかかる。8月18日に生越区長宅に伺い事業の説明と協力をお願いした。

 前述したとおり、生越地区は昭和村の中でもまとまりのある形態をした小さな集落である。地域内は、通過交通も無く、徒歩で安全にゆっくりと廻れ、景観資源の豊富な地域である。また、昭和村内はどこのお宅でも庭の手入れが行き届いているが、この地域は特に整っていると思う。

 調査では、歴史的建築物として主屋39棟、藏23棟、蚕室41棟が確認された。世帯数から推定すると主屋の残存率は約60%程度である。今回、プロット図には建築物の他、樹木や石造物を取り上げることにした。残念ながら建物詳細調査を行うことは出来なかった。特に重要な主屋の登録文化財候補としては、6棟あるが、所有者の確認は取れていない。今後、さらに詳細調査を含め進める予定である。

図-4 景観資源調査
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図-5 養蚕民家カルテ
図-6 景観資源調査 社寺
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図-7 生越調査のお知らせと協力依頼 図-8 H・S家
図-7 生越調査のお知らせと協力依頼 図-8 H・S家
図-7 生越調査のお知らせと協力依頼
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図-8 H・S家※図面はクリックで拡大
■村指定文化財 生越の横井戸

 生越地区は片品川左岸で赤城山北麓の扇状地で発達した河岸段丘面にあり、きわめて水利に恵まれない土地であった。そこで住民は、明治19〜21年の3年間を掛けて、集落の南側にある赤城山山麓の急斜面に向かつて水平に隧道(横井戸)を掘り、地表からの浸透水を集水して生活用水を確保した。横井戸には縦井戸と違って動力を使用せず、水が斜面の落差により自然流下し、集落全体に給水ができるという大きな利点がある。 現在取水している横井戸は5本ある。生越地区には簡易水道が1973年に設置されているが、現在、横井戸の水も各戸に給水されている。今も野菜洗いや泉水の水に利用されている。住民は生活水の中心が簡易水道に移っても、横井戸を廃止しようとは考えていない。

 横井戸は、新潟県長岡市や中魚沼郡周辺の横井戸(生活用水・消雪)・三重県鈴鹿山脈東麓の横井戸(マンボ・マブと呼ばれている)(水田の灌漑用水)・御所市の横井戸(水田の灌漑用水)などで、類似の集水施設は、神奈川県・長野県・岐阜県・愛知県・滋賀県・大阪府・奈良県・熊本県等にも分布しているそうである。詳細に調査は行っていないが、生越地区のように、横井戸を集落の共同給水設備として利用している例は見当たらない。

 旧新田郡藪塚本町(現太田市藪塚町)出身の実業家伏島近蔵は、欧州での水道事業の見聞から明治15年頃横浜で台地に横穴を掘削して清水販売業を始めたとのことである。(みやま文庫『海を渡った幕末の上州人』)生越の横井戸に何か示唆を与えたかもしれない。

図-9 生越の横井戸 図-10 生越の景観スケッチ 図-10 生越の景観スケッチ

図-10 生越の景観スケッチ※クリックで拡大

■生越での活動結果

生越の景観資源調査は、ほぼ終了したが、景観保全と地域資源の活動は緒についたばかりである。これを基に各年度の糸井地区と同様、住民に地域資源として認識して貰う作業が始めなければならない。それと同時に、今回、面識の出来た人達が、景観保全と地域資源を活かす担い手として活動していく場の設営支援を行っていく予定である。