・日 時:2012年1月29日 18:00〜21:00 ・日 時:2012年1月30日 10:00〜12:00 ・日 時:2012年1月30日 13:30〜16:30 |
1日目の29日は「食材からレシピを、生活文化から住まいを考える」をテーマに、養蚕古民家の高橋家で地元の酒と、群馬の食文化を代表するおっ切込み(うどん)を楽しみながら、講師の福井隆さん、真島俊一さんを中心に活発な意見を交換した。
2日目は、旧沼田警察署分署を見学し、地域づくりの拠点として活用方法を探った。住民の発案で、長者久保にあった小学校旧分教場の建築材料を再利用した民家や隠れキリシタンの墓地、糸井地区の古くからの水源とみられる大規模な湧水池「大井戸(おいど)」も見て回り、地域の特質を確認した。
最後に村役場会議室で、講師の福井隆さんと真島俊一さんが、2年間に及んだ昭和村の観察結果を踏まえながら講演した。
今年度の研修会としては最後になるため、二人は、住民が自らの地域の成り立ちや暮らしの構造を理解していないなど、村の課題を率直に述べ、過去からつながる村の暮らしを理解するためには地域模型作りが好ましいとしたうえで、当事者意識は持つためにも旗印・目標を決めて何らかの事業を進めるよう提案した。
同時に、片品川に近い伝統的な集落と、近代的な生産大地(畑地)となった上部台地の暮らし方とを分離して考える百年計画を村が立て、近代的生業の浸入で乱れている下部台地の伝統的地域を救い出すことや、農業生産性をあげるためにも、全国水準の文化財として説明できるように議論して欲しいと要望した。
このほか、福井さんは、地域の特質を学び、地域づくりに活用する「地元学」を紹介した。「ないものねだりは駄目。新しいものは、ないものからは生まれない。今あるものとあるものの掛け合わせから新しいものが生まれる」と言葉を強め、地形図や地名、言葉、人の歴史、水路や道路の土地利用、圃場や里山の利用法、地域の食、仕事と道具、古くからある建物や庭、産業、人の手が作り上げた風景と自然、風習や神事、災害体験と、調べるべき項目を列挙した。昭和村の「土地らしさ=遺伝的個性」を把握して村づくりを考えてほしいとの狙いだ。
地元学を踏まえた具体的な活動の進め方もアドバイスした。「自分の思いと、地域が求めていることと、地域の資源との掛け算が大きなポイント」で、「地域を知る、現場は変わるので常に現場を知る、元気にする仕組み、プラットフォームを、一つの旗印を掲げ、役場なりNPOなりが事務局になって」前に向かって攻めるための組織を作る。「今ある組織でできるかどうかを常に問いかけ、できないのなら新しい入れ物、組織を作って、旗印を持って動いていく。他の団体と競合しない、誰も参加でき、フラットで常に学べる組織が必要だ。さらに学んだことを磨いていくのが大事。常に事業化を考える。地域を元気にする、暮らしをよくするための手段。小さなことからでも良い」とまとめた。
参加した住民らは、それぞれの立場で行っている活動を説明したり、今後の活動への意欲を示したりした。
高齢者福祉NPOの結成を目指している住民は、「当事者にならないと、何を聞いても頭に入らないということがよくわかった。古い家では高齢者も緊張が解ける。新民家福祉とあえて名づけて古民家を活用し、高齢者の安心できる場を提供できるように努力したい」と、古民家活用への意欲を語った。長い間大工をしていたので、その腕を生かせることがあれば協力したいという人もいた。リンゴ園の経営者は、季節的なイベントを開いて昭和村に関心を持ってもらうため、リンゴの花が咲く五月連休明けにリンゴ園を一般に開放してみたいと述べた。警察分署跡などで試験的にお茶の会を開くのもいいという意見もあった。地形模型造りや警察分署跡の活用に参加したいという意向は明確には示されなかったが、古民家を財産として活用する村づくりへの意欲を感じさせる研修会だった。
図-29 夜なべ談義 | 図-30 旧沼田警察署分署見学 |
図-31 旧分教場の古材再利用の住宅 | 図-32 住宅裏の隠れキリシタンの墓? |
図-33 湧水池「大井戸(おいど)」 |
真島さんは二日間の研修会で、地域の特質を把握する必要性を繰り返した。昭和村の地形的特質の上に、縄文、古墳時代以来にわたる住民の暮らしによって形成された「自然」景観や伝統を映した住まい方を把握した上で、現代生活で混乱している住居やその環境を見直し、使いやすくする計画作りを提案した。
昭和村には高さ8〜10メートルほどの樫ぐね(垣根)が多い。いずれも家の北側か西側にあり、防風林と思われている。真島さんが指摘したのは食との関係。「防風林というだけではない。樫から落ちるどんぐりを、遠い昔には食糧にも使っていた。住民は食糧になる樫の防風林を作り、そこに安心感も懐いていたのではないか」と、新たな解釈を加えた。
数多く残る大型養蚕古民家は重要な文化財と受け止められてはいるようだが、この古民家にどんな特徴があるのか、住民は十分には理解していない。多いところでは8段にもなるという、全国的に見ても大きな特色といえる河岸段丘を、いつごろからどのように使ったのか、 大規模な畑地へとどう展開していったかについても「誰も説明できない」と地元の理解不足を嘆いた。古民家の暮らし方についても、例えば国交省の予算を使えるモデル住宅事業では、こうした地域の特質を説明できなければ採用されない、と指摘、研究の必要性を強調した。
図-34 昭和村の地形の特徴上の生産台地では、農作業の大型車を使うので、下の伝統的居住地域とは大きく異なる様相を持っている。家は窪地に造り、林を作るなどで風をしのいでいる。考え方としては、近代化した農地のそばに近代的な構造を持つ暮らしの拠点を持って来る、住まいの新しい道具を全部持った暮らしの場を考えることが可能になる。道路や営農方式が違うので、近代農業は下の集落には向いていない。トラクターや農機が道路を走るので昔のスケールでは考えられない。場所場所に合った生活文化を選択、創造しなければならない。
この近代の構造が昭和村に大変混乱を起こさしているということが事実ある。農業は、近代化で便利になったが、一番の拠点であるべき住居が荒廃している。衣食住が一番手が抜けていて皆さんの住まいがすみにくくなっている。
伝統的な暮らしの拠点では屋敷取りの中で家業と生活の両方兼ねていた。近代住宅(生活の場)は家業はしない。暮らしとは食べていく方法と生活する方法をふたつ考えることだ。近代の家は、生活だけ。一世代住居は生業を考えていない。これが考えられないと、昭和村のこれからは考えられない。困っているのは生業と生活をする家。ぼろぼろになっている。ぼろぼろであっていいはずはない。これから10年もすると、昭和村の生活力、暮らし力が極端に下がります。理由は暮らしの拠点がぼろぼろだから。これを何とかしろといいたい。
村の伝統的構造を景観としてみるだけではなく、暮らしの拠点として整備するために伝統的家屋と養蚕民家をどうするかが一つ。住まいとして暮らしやすくすること。家族がこれをやることで成り立つことを考えねばならない。伝統文化を活かした近代生活のモデルを創って欲しい。
また、景観計画を作っているというが、目的が「美しくすること」に終わってしまう。景観構造を考え、文化を考えた景観、人が作り上げた風景、2000年の昭和村の歴史の中で、人の手が入っていないものは何も無い。国交省のいうような景観ではない、文化的景観づくりを考えて欲しい。
常に学んで形にしていく。繰り返して学んでいく。学びの道具として地形図を作るのはいい経験になるし、大きな掘り起こしになると思う。住民が参加して、同時にいろいろなことを調べていく。石仏がどのくらいあるのか。それを地形図に落とし込んでほしい。りんごの木は何年のものがあるのか。あるものを特産物化していく。ないものねだりから、あるもの探しへ。地元に学んで事業にする。
大事なのは、自分が当事者になること。ほんの小さなことでもいい、地域のためにこういうことをやりたいという思いで当事者になることです。
□昭和村を学ぶ(その土地らしさ=遺伝的個性を学び活かす)
地域を「学び、活かす」=地元学 ➪学ぶ対象
➪新しいものは「あるものとあるもの」の組み合わせから生まれる
↓
継続的に自分たちで学び、地域を知る➪地元学のルーティン化
↓
組み合わせ事業化する(産物等産業化、交流メニュー化、教育プログラム化、高齢者福祉メニュー化、修景など)に利用する
□地域における地域資源の生かし方(考え方)
■ 大きな変化の時代においては、従来からの枠組みの考え方で解決策を考えても、解決を図ることはできない。
(アインシュタインの言葉)
背景:財政破たん懸念、人口数縮小、環境共存、グローバル化
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香川県は、なんと「うどん県」で観光ポスターを作った!
秋田県は、「秋田美人」をもじって「あきたびじょん」で打ち出すことになった。
昭和村は・・・「野菜王国」? 地域外の人がこの言葉で昭和村をイメージ出来るでしょうか
昭和村は、樫の実の文化がある。食べる事のできる防風林(樫(かし)垣(ぐね))
それは、粉を食べる文化 「粉食」文化➪ うどんにつながる?
植物を上手に使う文化が形成された。
昭和村は、常に時代の先端を切り開く文化もある。
➪ 山は牧場から農地へ 養蚕から蒟蒻に移り、朝どり野菜に、そして季節をまたいで大規模「出づくり農業」
・もう一度 足下を見直して、昭和村を何で打ち出していくかを良く考えよう
➪ そのために、地形模型をつくることから始める
➪ 地形模型は、2500分の1を住民の手でつくる
➪ みんなでつくる中で、あらためて昭和村を知ることから始める
・例えば、犬をどの家も飼っている(生越には犬が多い)!
「ワンだ〜らんど昭和村」も一つの文化!
・古民家は寒い、不便から、最先端の快適な暮らしの場に➪新民家PROJECT
・「お井戸 ものがたり」
➪上手く行っている事例について、誰のどんな動機から始まっているかを注視
➪自分の思い×地域が求めていること×地域の資源
図−12 地域における地域資源の生かし方(考え方)
@地域を知る(常に現場を知る)
Aまちを元気にする仕組み(プラットフォームづくり)
B常に事業化を考える