活動効果

 住民・行政の中に、自分たちが持っている地域資源の見方が変わってきたこと、つまり、今まで邪魔な対象でしかなかった、大規模養蚕民家が農業とは違う地域資源であることに気付き始めたことが、最大の成果であると思う。その意味で、研修会・ワークショップの果たした役割は大きかった。講師になって頂いた先生方のお力である。

 見学会で村を歩くと、参加者にとって村の景色が新鮮に見えたようである。外来者が驚くのと同じ感覚とおらが村の多少自慢の入る様子がみてとれる。

 また、旧沼田警察署分署(旧糸之瀬役場庁舎)の建物は、一部に残したいと思っていた住民もいたが、何から手を付けて良いか判らない状態であった。今回のプロジェクトの提案で、住民自身の手で掃除を行い、活用が具体的に俎上に上がる状態になったことも効果の一つである。そして、スクラップになる予定の火の見櫓が、地域のシンボルとして保存されることになった。

 建築物調査については、図面化はこれからであるが、地域の中心と思われる建物が調査させて頂けたことが、出色な成果であった。これから時間を掛けて、登録文化財への説得を続けたいと思っている。また、登録文化財が視野に入っているお宅も数軒でてきた。嬉しいことである。また、作成した景観マップとスケッチ画は村や商工会に提供して活用して頂きたい。

 無料住宅相談は、残念ながら具体的な再生事例等の成果はなかったが、プロジェクトの姿勢として住民の理解が得られたものと考えている。助成期間外になるが、3月に今年度最後の相談会を開く予定である。出来れば来年度以降も続けたいと思う。

 今回のプロジェクトの効果を纏めると

  • 養蚕民家や集落景観が、地域資源として農業に付加価値を与えることを認識できたこと
  • 具体的な再生・活用はこれからとしても、養蚕民家や集落景観が、地域資源として重要であることを認識できたこと
  • 旧沼田警察署分署(旧糸之瀬役場庁舎)の建物をコミュニティで保全に動き出したこと。今後は、行政が住民に協力することが求められる。私たちはこれからも協力するつもりである。
  • まだそれほど多くの人たちではないが、地域住民が地域の景観や伝えられてきた生活文化をまもるために動き出したことが、最大の効果である。

 私たちの未熟さから十分な活動が出来なかったが、今回の助成で、今まで見てこなかったもの例えば、生業、此所では農業と歴史的景観保全が積極的にコラボレートして新しい農業が生まれ、単に古民家で農業体験をさせるだけでないものを企画する可能性を考える。一方で農業が、古民家の再生に力を発揮するとしたら、環境共生建築・長期優良住宅を農作物が速報支援をすることになる。今回の助成は、私たちを含め様々な人たちに新しい視野を与えてくれたものと感謝している。これからも宜しく御指導頂きたい。

撮影:福井 隆